Abyss

日々の思索と妄想と魑魅魍魎。三木清の『人生論ノート』とパスカルの『パンセ』が私の心の拠り所。Peace.

僕は小説が読めない

 小説が読めないことを長い間恥じてきた。これは自分の知力の所為であると信じ込んできた。しかしその実私は、一息でその小説のすべてを理解し、自分のものになったという確信が欲しかっただけだったのだ。そうなると当然、長編小説など一足飛びに読破できるはずもなく、何度も何度も断念せざるを得なくなる。これまで少なくとも十度は『罪と罰』に挑戦してきた。しかし、50項ほどで断念しては、また再度、初項から読み始めるという愚行を繰り返してきた。それを愚行と気が付くまでにおよそ10年は費やした。

 aphorismが好きである。短いからである。多分、それだけの由縁であろう。付け加えるならば、短文の中に込められた百の経験を感じうるからだろう。要は、横着なのだ。概略や要旨に目を通して内容を分かったつもりになるよりは、箴言集を読んだ方がずっと危険が少ないように思える。しかしそれではいつまで経っても、長文に耐えるための辛抱強さは身につかない。読書は短距離走者には向かない。これはマラソンである。振り返りは禁物であり、逆走はもってのほかである。ゴールを切るまでは歩みを止めてはいけない。

 焦りは禁物であるが、人生は有限である。この加減が難しい。心地よい焦りを知る必要がある。