Abyss

日々の思索と妄想と魑魅魍魎。三木清の『人生論ノート』や小林秀雄の『考えるヒント』みたいな随想録や告白集を書くのが夢。嘗て高校教諭。現在はラップ研究している大学院生。Peace.

最も安価な趣味、つまり自己改造

  力の入れ処という熟練者の言葉がある。ここぞと言う時に気持ちを落ち着かせ、一点に体力と知力を集めるようなモードに入ることだ。力の抜き処とは、この反対に、気持ちを多少鼓舞しながらものんびりのペースを落とさずに流して処理することである。スポーツに例えれば、前者は100m走で後者はフルマラソンである。走り方を間違えればレースに勝つことは難しい。

 

   最近ものを考えるようになって漸く、自分にはこの「勝負勘」という重要概念を了解していないことに気が付いた。ブレーキを失った自転車で坂を一気に下るような、絶体絶命の感覚つまりスリルを味わうのが好きなので、マラソンをするときもいきなり全力でスタートする。中盤からみるみる速度は落ちるが、後半にハイ状態になって、訳もわからず足だけ動かしてなんとか上位に食い込むようなスタイルを貫いてきた。しかし最近のゴタゴタを振り返ってみても、そろそろこの向こう見ずなスタイルを変える時期が来ているなと感じることが多くなってきた。つまりスタミナが続かなくなってきたのだ。仕事にしても研究にしても家事にしても人付き合いにしても、スタートダッシュだけで乗り越えられるほど甘くない。こういった競技は、一瞬で終わる100m競争ではなく、長い時間を懸けて味わい楽しむ散歩に近いことを知ったと言い換えてもいいだろう。

 

  しかしながら、こればっかりは自分の生まれ持った性分であるために、なかなか直ぐには矯正出来ないように思う。知らず知らずのうちに再びスタートダッシュを繰り返して、スタミナ切れを感じる頃にはもはや手遅れということにもなりかねない。主観では自分の気持ちが分からないので、客観的になろうと思う。論理的筋道や合理性といった観念を持たねばなるまい。現実性をもった計画や、決まったルーティンをコツコツとこなす着実性や、他者からの定期的な評価体制を整えねばなるまい。

 

  それにしても、自己改造ほど安価の趣味はない。金が無いなら無いなりに、遣り甲斐の在ること見つけたいと思う。出来ることなら、金が入るようになっても継続できるものが最高だが。