Abyss

日々の思索と妄想と魑魅魍魎。Peace.

中庸を重んじる

 書きたい欲求が止められない。読みたい欲求が止められない。こうした知的な欲求は、寝食性の原始的欲求よりも高度な欲求と云われるが、私にとっては、知的欲求くらい始末に悪いものはない。言うなれば、書きたい欲求とは生きる歓びであり、読みたい欲求とは死の恐怖である。この一見特殊に聞こえる読書欲は私だけの専有物ではない筈だ。世界の全てを書き表したい、世界の全ての記述を解読したい。永遠の欲求である。これは純粋な知的欲求であるのか、果たして人間に純粋さなど求められるのか分からないが、それにしても、知的欲求とは永遠に満たされることがない。

 満たされない欲求を抱えながら生きるとは、不満であるということだ。不完全な自分を引き摺りながら生きることは、辛く苦しい。苦しくなったら般若心経を唱える。諸行無常の要諦を思い出そうとする。色即是空空即是色。そうだこれは一切空である。空であるけど、俺は生きているから苦しむ。それは苦しみからの解放が不可能な事を悟ることであり、厳しい現実に真正面から対峙することに他ならない。真正面から、すこし上から、斜めから、下から見上げるように。目を開けとけ、耳かっぽじっとけ、口は閉じて、首を揺らしながら。苦しみから逃げないと固くなるのではない。現実とは空であると認識できないであろうと思いつつ、だからこそ、避けられる危険は可能な限り前もって避けるのである。予測の不完全性も了解しているからこそ、最善に見える物よりも次善を選ぼうとする態度のことだ。否、現実では最悪よりも次悪(こんな言葉ないが)を選ぶ、と言うほうが分かりやすいか。

 ベストとワーストを避けよ。後はどちらでもよい。それが釈尊の教えなら、喜んで慎んで従おう。