Abyss

日々の思索と妄想と魑魅魍魎。三木清の『人生論ノート』や小林秀雄の『考えるヒント』みたいな随想録や告白集を書くのが夢。Peace.

祖父の懇願

 祖父について、少し話そう。一昨日のことだ。見舞いに行ったのだ。痩せこけた祖父の手を握りながら、歯のない口で何かを訴えているのを見る。喉の奥に痰がへばりついている。必死な眼で此方を見つめる。両手をギュッと握りしめる。何が言いたいのだろうか。尚も私は困惑する。「また明日来るから」そう言って去る。

 翌日行ってみると、祖父は寝ていた。あの必死な形相は消えていた。喉の痰はまだへばりついたままだった。苦しそうだった。

 母の姉つまり私の叔父さんに会った。お爺さん、いつもああなんじゃ、大事な話がある言うて。会社が潰れたじゃあ詐欺師に騙されたじゃあなんじゃあ言うて。俺は、ああそうなんだな、と思った。おじいちゃんは、まだ準備できてないんだ、と思った。

 これから母と弟と弟の嫁と一緒に会食だ。私が義理の妹に会うはこれが初めてなのだ。弟にも会うのはもう三年ぶりだ。何を話そうか。

 会食の後、私達一行は、祖父に見舞いに行く予定である。祖父の準備の切っ掛けになればいいが。