Abyss

日々の思索と妄想と魑魅魍魎。三木清の『人生論ノート』とパスカルの『パンセ』が私の心の拠り所。Peace.

現実の苦味・幻想の妙味

 現実の苦味を知っている人には、是非とも幻想の妙味を知ってもらいたい。その逆も然り。幻想のドツボに嵌っている人には、是非とも現実の喜びを知ってもらいたい。世の中は、現実と幻想の二つの側面があり、それぞれに、味わいがあり、深みがある。つまり並列すればこうなる。現実的味わい、現実的深み、幻想的味わい、幻想的深み。具体的に言えば、現実的味わいとは、失恋である。失職である。不合格通知である。悩み苦しみの根源的な人間関係に起因する。現実的深みとは、婚活である。求職である。再挑戦である。悩みや苦しみを受け入れて、尚、再び立ち上がろうとする態度のことである。幻想的味わいとは、例えるなら、深夜の麻雀である。深酒、酩酊の状態である。煙草の吸い過ぎで吐き気がするような、世界がメリーゴーランドのように回転する、錯覚状態、下手すれば錯乱状態である。幻想的深みとは、麻雀後の朝焼けである。あの朝焼けの比類のない美しさに見とれて立ち止まる時の恍惚である。アパートに帰って着の身着のままベッドの倒れ、夕方になって「嗚呼、人生下らない」と思う時の心地よい幻滅である。深酒で、一人、帰り道。咄嗟の吐き気に負けて道端に吐いて急いで立ち去るときの追われている様な疾走感である。四つを纏めよう。私にとって、現実とは幻想であり、幻想とは現実であり、味わいとは深みであり、深みとは味わいである。表象とはいつも両義的である。ただそれだけが言いたかった。