Abyss

日々の思索と妄想と魑魅魍魎。三木清の『人生論ノート』や小林秀雄の『考えるヒント』みたいな随想録や告白集を書くのが夢。Peace.

勝負勘を身に付ける

 勝負とは、集中そのものである。命の遣り取りは「真剣」勝負だが、一見すると平々凡々とした平穏な暮らしの中にも、本人の心の中では勝負の連続であると言って過言でない。ここぞという時に負けない力を養うには、やはり、日頃から勝負勘を養うことが肝心である。一朝一夕には身に付かないが、私は今日から毎日訓練しようと思って居る。

 「時間無制限一本勝負」というとまるでプロレスだが、彼ら彼女らはまさに生身の肉体のぶつかり合いなので、実際は、短期決戦である。私の場合、勝負(修士論文の提出)の時間は丸一ヶ月で、勝負の場所は、まさに今現在座っているこの机である。この机が私の戦場であり、リングであり、舞台である。

 だから、まず私は、この神聖な空間を汚さないように日頃から注意深く整理整頓すべきだろうと思う。本来なら本箱を買うことを最優先にすべきだ。というのも書籍が床に平積みにされ、本が傷みつつあるからだ。不要な本を下に置き、有用な本を見える所に置くことから始めよう。

 さて、或る程度の片づけが終わって気付くのは、有用な本の如何に少ないこと少ないこと。私の二棹の本棚に縦横ぎっしり詰まった、恐らく千冊弱の本の内、比較的有用な本は、聖書、経典、字引、事典、全集、古典、歴史書などの参考書を除けば、数十冊に満たないだろう。真に有用な、たとえば今晩必要な本は、きっと四、五冊に収まる。今すぐ読むべき本を、これだと決めるのは、まさに勝負勘を鍛えるのに役立つ。

 舞台が整ったところで、実際に、勝負勘を身に付ける為には、様々な能力を開発する必要がある。まず、有用と無用の区別を明確につけなければならない。今すべきことだけの輪郭を明瞭に、エッジを立たせるのだ。見る物、聞く物、使う物を限定する。他に一切頼らず、手元にあるもので工夫する。次に、情報に頼らず、直観を信じる。ステレオから流れる声の音量を落とす代わりに、自分の内面の世界の住人たちの声に耳を傾ける。三つ目は成り切る力だ。演技力だ。鬼の形相で、殺気立つ。近寄らせない。殺し屋の手つきで、鉛筆を研ぐ。FBI捜査官並みの洞察力で文章世界、音の世界を精緻に観察する。偉大な哲学者の如く、思考を先鋭化させ、論理回路を活性化させる。禅僧の如く心を落ち着ける。一挙手一投足に真心が込められている。目利き、工夫、成り切り。こうした総合的な力の結晶が、勝負勘なのだろう。

 続きはまた明日。