Abyss

日々の思索と妄想と魑魅魍魎。三木清の『人生論ノート』とパスカルの『パンセ』が私の心の拠り所。Peace.

工夫・言葉・技術

 何かをしたくないなら、なぜそう思うのかを考える。したくない原因があるのなら、したくなる動機もあるはずだ。

 例えばストレッチ、スクワット、全身体操、瞑想、洗顔、歯磨き、発声練習、写本、暗唱、100mダッシュ、1時間散歩、浴槽に浸かりながら読書、部屋の片付け、衣服の乱れを整える、食べ過ぎないこと(「腹八分目に医者いらず」は真実)、水分をこまめに摂る、ビタミン剤を摂取する、薬を飲み忘れない、体重と食事と睡眠と運動と服薬と家計の管理をアプリで行う、などである。

 此等の工夫は、生理運動的であり精神修養的である。身体と認識の間に立つもの、肉体と精神を取り結ぶものは、例えば言葉(言葉遣い)である。思いつく限り並べれば、丁寧さ、誠実さ、静けさ、機知、清潔さ、秩序、愛、思い遣り、配慮、遠慮、思慮、謙遜、施し、辞退、献身、自己犠牲である。今挙げたような、行為と思惟の直接的に且つ強固に結びついた言語表現はまさに工夫の奥義であると信じる。

  言葉について考えるとは、文章について考えることだ。文字化されない音声に留まる言葉すなわち声や唄いについて、私は定式化されたものを読んだことが少ないが、きっとあるに違いない。いずれにしても、文章作法や歌の作法を説いた指南本の類を参照することは有益だろうと思って、買ってみたものを挙げて見たい。

文章読本 (中公文庫)

文章読本 (中公文庫)

 
陰翳礼讃・文章読本 (新潮文庫)

陰翳礼讃・文章読本 (新潮文庫)

 
私の文章作法 (文春文庫 (312‐1))

私の文章作法 (文春文庫 (312‐1))

 
私の文章作法 (中公文庫)

私の文章作法 (中公文庫)

 
【新版】日本語の作文技術 (朝日文庫)

【新版】日本語の作文技術 (朝日文庫)

 

 

 参考図書として、高校時代の国語便覧がかなり利用価値が高いことが判明した。当時は面白くないものと決めていたが、今になって読み返すと大変興味深く、且つ丁寧に編まれ、網羅的であり、情報量として申し分ない。

総合国語便覧

総合国語便覧

 

  大学受験用の現国参考書も、良書が多く、自習に最適である。以下にお気に入りのものを挙げておきたい。

現代文読解力の開発講座 (駿台受験シリーズ)

現代文読解力の開発講座 (駿台受験シリーズ)

 
現代文解法の新技術 (大学受験スーパーゼミ徹底攻略)

現代文解法の新技術 (大学受験スーパーゼミ徹底攻略)

 
現代文キーワード読解[改訂版]

現代文キーワード読解[改訂版]

 

  英文科に進学したいと常々思って来たが、最近は寧ろ、国文科に進学したいと気持ちが変わってきたように思う。私が好きな言葉は結局の所、日本語、否、現代国語である。英語の面白さよりも、英語を翻訳した翻訳語の方に惹かれるのだが、結局、翻訳語も元は現代国語の一部分なのであって、現代国語はもっと大きな日本語の範疇に含まれ、日本語とは古来二千五百年以上の歴史を担っているのであって、要するに日本史、地理史、風土史抜きには語り得ない。無論、明治維新以来の西欧語の輸入とその土着化の在り様を追っていくのも一興だろうが、手慰みに過ぎないようにも思えるし、老後の愉しみに取って置こうかとも思う。今すぐにせねばならないことは、最も大切な事だけ、先延ばしできない案件、最重要な事である。南形熊楠の自戒を思い出す。

 「今日出来ることは、明日まで延ばさず」

 日常の工夫にせよ、言葉遣いの技術にせよ、人生観や世界観の構想の一部に過ぎない。しかし、たとえ人生観が完成しても、その時にはきっと老いさらばえて、心身も弱り果てているだろう。真剣に遣りたいこと、発見したいこと、文字や造形として体系的に残して置きたいことが先ずあって、その後に工夫や技術が付いてくるはずだ。この順序は守らねばなるまい。工夫の根本、技術の本質とは、やはり熊楠の言葉(一九歳の時、アメリカ留学する直前の日記の扉に書かれていたとされる)に集約されるように思える。

 斎藤秀三郎にしても、南形熊楠にしても、水木しげるにしても、荒俣宏にしても、三木清にしても、福島智にしても、中島義道にしても、私の好きな人間は皆、男らしいというよりも少年らしい。私は、男の前に少年で、少年の前に幼子であった。彼等のような純粋な知的探求心だけを頼りに生きて行けたら望外の幸せだろう。

 学者に、物書きに、研究者になれたら。