Abyss

日々の思索と妄想と魑魅魍魎。Peace.

世俗的ヒューマニズムーその純粋で血腥い生の在り方について

 心残り、後悔、自責の念。こういったものを寄せ集めて大きな情念の塊を作ったとしよう。業や怨念や呪詛で塗り固められた瘤のようなそれを、生半可な気持ちで愛でる事は避けるとしても、そこには何か今の私に欠けている「真理の条件」のようなものがあると思えて仕方ない。「死んでも死に切れない」という人間の真理が其処には在る。人間の欲深さを上手く表現している言葉だと思うので、私は好きである。その反対の「生きていても仕方ない」というのも、同時によく理解できるのである。私という人間は、否、人間とは一般に、不思議な生き物だ。矛盾した気持ちをどちらも同じ器で受け入れるのだから。

 

 「死んでも死に切れない」と「生きていても仕方ない」という相対する想いは、弁証法的な解決を敢えて避けて、その情緒の襞を眺めて見れば、前者には生きていることに対する執着心、切なる希望、悔しさ、絶望に至らない信念を感じる。後者には、死に往く存在である自己と向き合おうとする姿勢、必死に闘ってきた末に出た結論、「諦め切れぬと諦めた」(これもお気に入りの言葉だ)というような深み、濃度、経験の密度が感じられる。前者も後者も、それはきっと生きていれば誰しも感じる気分であろう。誰もが一瞬考えるのだ。果たして生きて行くとは意味があるのか。死んだら一巻の終わりではないか、そうであると一方で知りながら、何事かを真剣に取り組もうとするのは土台無理な話だ。このような心理状態に陥ることは、特に近代人特有の虚無のムードも相まって、よくある話である。近代人の死、それは虚無からの逃避としての自死である。虚無主義が、しかしながら現在の日本の主流の思想に昇格しないのは、本当に凄いことだと思う。自殺者の数が減っていることも、大変素晴らしいことだ。政治や経済の話には疎いのだが、きっと何らかの政策が何らかの形になって表れているのだと思う。有難いことである。または医学の発展ということもあるかもしれない。「シニタイ」と訴えることが許される雰囲気が醸成されたのかもしれない(新型うつ病と真性のうつ病の区別の問題も起こっているが)様々な要因と文脈が重なって、私たちは、それでも何とか生きようと藻掻いている。仕事に傾いたり、宗教的生活を求めたり、政治活動に奔走したり、美学や言語表現や芸の世界に体当たりしたりしている。

 

 人間は矛盾を引き受けながら、同時に嫌な事、辛い事、苦しい事、大変な事も引き受けることが出来る。無駄骨を折るに決まっていると知りながらも、大切な人に頼まれたからという理由だけで、それを引き受ける。ギブ・アンド・テイクの健全な関係性が全く保証されなくとも、完全なるギブ(滅私)を求める事すらあるのだ。この凄まじさ、腹の太さ、豪胆さ、強靭さ、覚悟こそ、最も愛すべき人間性である。私は所謂「ヒューマニズム」を信奉する者ではないけれども、世俗的人本主義secular humanism / scientific humanism)には、多分に評価したいと思う。神の死んだ世界でも、神を求める気持ちだけは、なにがなんでも守り通そうとしたニーチェの世界観とも重なるようである。

 

 ウィキペディアでの「世俗的ヒューマニズム」の説明が面白かったので、そのまま引用してみる。世俗的ヒューマニズム - Wikipedia

 

 世俗的ヒューマニズム(英語: secular humanism、世俗的人本主義)は、超自然性の存在を否定し理性・倫理・正義を信奉するヒューマニズム思想の一種で、神などこの世を超越した存在への信仰を要さずとも人はニヒリズムに陥らず道徳的たりえるとする立場の総称。キリスト教ヒューマニズムと区別するために20世紀初頭に生まれた。

 世俗的ヒューマニズムでは、盲目的な信仰・教条主義・啓示・宗教的道徳の代わりに科学的手法による真実の探求が奨励され、「科学的ヒューマニズム」(英語: scientific humanism)とも呼ばれる。主に無神論者・不可知論者・経験主義者・合理主義者・客観主義者・懐疑主義者・唯物論者、そして一部の仏教徒儒教徒などに支持されている。

「著名な世俗的ヒューマニスト」として以下のような(主に西洋諸国出身の)著名人が挙げられていた。

アイザック・アシモフ1920年ー1992年。 アメリカ出身のSF作家で、ボストン大学医学部の生化学教授でもあった。代表作『われはロボット』『ファウンデーションシリーズ』)

アーサー・C・クラーク(1917年ー2008年。 イギリス出身のSF作家。アシモフハインラインと並ぶSF界の「ビッグスリー」と並び称された。科学解説者としても有名。代表作『幼年期の終わり』『宇宙のランデブー』)
リチャード・ドーキンス(1941年生まれ。イギリス出身の進化生物学者・動物行動学者。代表作『利己的な遺伝子』で遺伝子中心的視点を持ち込み話題。『神は妄想である』により現在の地位を確立。

 

他には・・・


・E・M・フォースター(1879年ー1970年。イギリス出身の小説家。)
トーマス・ジェファーソン(1743年ー1826年。第三代アメリカ合衆国大統領
バートランド・ラッセル(1872年ー1970年。イギリス出身。哲学者。数学者)
カール・セーガン(1934年ー1996年。アメリカ出身。天文学者。)
カート・ヴォネガット(1922年ー2007年。アメリカ出身。小説家。)
フィリップ・プルマン(1946年ー。イギリス出身。児童文学作家。)
ピーター・シンガー(1946年ー。オーストラリア出身。哲学者。)
・E・O・ウィルソン(1929年ー。アメリカ出身。昆虫学者。)
ダニエル・デネット(1942年ー。アメリカ出身。哲学者。)
ノーム・チョムスキー(1928年ー。アメリカ出身。哲学者。)
ジョン・レノン(1940年―1980年。イギリス出身。ミュージシャン。)
・ジェームズ・ワトソン(1928年ー。アメリカ出身。分子生物学者。)
マイケル・シャーマー(1954年ー。アメリカ出身。サイエンスライター。)
ジュリアン・ハクスリー(1887年ー1975年。イギリス出身。進化生物学者。)
サルマン・ラシュディ(1947年ー。インド出身、イギリスで学び、現在アメリカ在住。元イスラム教徒の無神論者。代表作「悪魔の詩」の翻訳者である筑波大学助教五十嵐一氏の暗殺事件で一躍話題に。)悪魔の詩訳者殺人事件

 

 

 最後!

 

 これは買っておかねばならない。読まずに死ねない本がまた増えた。