Abyss

日々の思索と妄想と魑魅魍魎。Peace.

暇潰しの流儀

 未だ死にたくない。未練があるのだ。生への執着心が深い。死の誘惑よりも、死の恐怖の方が問題であるのが何よりの証拠である。死ぬことが恐ろしい、だが生きていることも恐ろしい。しかし、死にたくはない。つまり、楽して生きていたい。そうなのだ。正直なことを申せば、わざわざ辛い思いをしてまで生に齧り付くことはない。所詮、私の一生など塵芥の如きものであって、その痕跡を残したとして、誰が振り返るだろうか。否、私は誰かの死を思うだろうが、それはきっと私のことなど全く知らなかった人達だ。小説家、詩人、映画監督、評論家、文藝に尽くした功労者。私は、可能なら何か作品を残したい。それは可能であるのか。私の生きた証として、本を一冊出版したい。本のタイトルは私の墓標となり、刻まれた言葉は全て生前の告解と懺悔と祈願となるだろう。私は、自分の生きた証としての表現が欲しい。表現がしたい。自己表現。それは、翻訳であるだろう。私は素晴らしい翻訳家になれると思う。なぜなら私は自分のことが嫌いだから。相手のことを想う方が好きなのだ。世界や社会や家や学校や職場のことについてあれこれ考える方が好きなのだ。自分の夢や理想的な生活や欲望の充足について追い求めることは取るに足りないことだと知っているからだ。

 

 翻訳をしよう。私は翻訳家になりたい。そして、私は宗教的生活に入ろう。それは、あくまでも趣味の域を出ないだろう。私は信仰を告白したり、特定の宗教を賛美したり、教義について勉強したりしない代わりに、自分の弱さや醜さや冷酷さや嫌らしさや卑しさや悪さについて徹底的に考えようと思う。それを如何にして自分の中から取り除くのかを、現実的に実行力のある遣り方を見つけようと思う。

 

 如何にして正直さを保つのか。弱くない、負けない人間になるのか。道徳を守るのか。倫理的な繊細さを保てるのか。強靭な体と心を保てるのか。